受講料の決め方:原価計算・料金体系・割引の基本
塾・スクールの受講料の決め方を解説します。原価・相場・価値の3つの考え方、損益分岐点の計算例、料金体系、割引のルール、分割払い、値上げの伝え方までまとめました。
目次
受講料の決め方は、3つの問いに集約されます。授業1時間に実際いくらかかっているか、地域の同じような講座はいくらか、受講生にとってその成果にどれだけの価値があるか、です。適切な受講料は損益分岐点を上回り、地域の相場に合い、パック料金、割引、分割払いについての明確なルールのもとで一貫して適用されます。
要点まとめ
- 講師の給与だけでなく、家賃、事務、ソフトウェアの負担分を含めた授業1時間あたりの総原価から出発します。
- グループ講座は、開講する前に損益分岐点となる人数を計算します。
- 相場は確認のために使い、価格の根拠は提供する価値に置きます。最も安い競合をそのまま真似しないことです。
- 文書にした少数の割引ルールのほうが、その都度交渉する値引きより利益を守れます。
受講料を決める3つの方法
価格設定には古典的な3つの方法があります。うまく運営しているスクールの多くは3つを組み合わせています。原価が下限を、相場が範囲を決め、価値がその範囲のどこに位置するかを決めます。
原価から決める
講座の運営にかかる費用を合計し、利益を上乗せします。クラスが埋まれば、どの講座も費用を回収できることが保証されます。弱点は受講生が払ってもよいと考える額を無視することで、人気の試験対策講座を安くしすぎたり、競合の多い入門講座を高くしすぎたりしかねません。
相場から決める
同じ地域やオンラインで、レベル、クラスの人数、時間数が近い講座がいくらかを調べます。表示価格ではなく1時間あたりの料金で比べます。同じ価格でも40時間の講座と60時間の講座は別物だからです。相場は受講生が想定する価格帯を教えてくれますが、その範囲で採算が合うかは教えてくれません。
価値から決める
特定の試験の合格、企業に評価される修了証、少人数制、経験豊富な講師、柔軟な時間割、質の高い教材、丁寧なサポートなど、受講生が得る成果と体験に応じて価格を決めます。相場の平均より高く設定できますが、その価値をはっきり言葉にでき、毎回提供できる場合に限ります。
実務では、次の順に進めます。
- 原価の下限、つまり講座が費用を回収できる最低価格を計算します。
- 同じような講座の相場の範囲を確認します。
- 示せる価値に応じて、その範囲の中で価格を位置づけます。
授業1時間あたりの原価を計算する
講師に1時間いくら払っているかは正確に分かっていても、授業1時間がスクール全体でいくらかかっているかを把握していないケースは少なくありません。後者の数字が、あらゆる価格判断の土台です。
固定費
固定費は、月に200時間教えても300時間教えてもほぼ変わりません。
- 家賃、光熱費、清掃費
- 事務スタッフと管理職の給与(経営者自身の適正な報酬も含む)
- ソフトウェア、ウェブサイト、電話、インターネット
- 保険、会計・法務の費用
- ウェブサイト、掲載料、チラシなど基本的な広告宣伝費
- パソコン、プロジェクター、家具などの買い替え費用を耐用年数で割った額
変動費
変動費は、授業時間や受講生が増えるごとに増えます。
- 講師の時給(社会保険などの事業主負担を含む)や業務委託料
- 受講料に含める場合の教材費、印刷物、検定の受験料
- カード決済やオンライン決済の手数料
- 修了証、飲み物など受講生ごとのその他の費用
費用から1時間あたりの原価へ
月の固定費を、毎月実際に提供できる授業時間で割ると、1時間あたりの固定費が出ます。これに講師の1時間あたりの費用を足せば、授業1時間の総原価になります。
最大の稼働時間ではなく、現実的な時間を使います。最も忙しい月の時間で割ると、それ以外の月にはすべての価格が安すぎることになります。夏休みなど授業が少ない月があるスクールも多いため、年間の平均を使いましょう。
計算例:損益分岐点となる人数
次の例は完全に架空のものです。小さな語学スクールが、12週間・週2回・各2時間の計48時間の夜間グループ講座の受講料を決める場合を示しています。数字はすべて自校のものに置き換えてください。
| 項目 | 架空の数値 | 計算方法 |
|---|---|---|
| 月の固定費 | 120万円 | 家賃、事務スタッフ、ソフトウェア、保険、会計、広告宣伝 |
| 月に提供する授業時間 | 300時間 | すべてのクラスと個人レッスンの合計(年間平均) |
| 1時間あたりの固定費 | 4,000円 | 120万円÷300時間 |
| 1時間あたりの講師の費用 | 4,000円 | 事業主負担を含む給与、または業務委託料 |
| 授業1時間の総原価 | 8,000円 | 4,000円+4,000円 |
| 48時間の講座の運営費 | 384,000円 | 48時間×8,000円 |
| 受講生1人あたりの変動費 | 4,000円 | 教材、修了証、決済手数料 |
| 受講生1人あたりの受講料 | 64,000円 | 相場と自校の価値を確認したうえで設定 |
| 損益分岐点となる人数 | 7人 | 384,000円÷(64,000円−4,000円)=6.4、切り上げ |
| 受講生10人の場合の結果 | +216,000円 | 10×(64,000円−4,000円)−384,000円 |
損益分岐点が7人ということは、受講料を払う受講生が7人いれば講座のすべての費用をまかなえるということです。それを超える1人ひとりが、利益、内部留保、投資につながります。10人ならこの講座は216,000円の利益を生み、5人なら赤字です。
計算結果の生かし方
- 最少催行人数を決める:ここでは7人です。達しなかった場合の対応も事前に決めておきます。開講を延期する、2つのクラスを統合する、時間数を減らすか別料金の少人数レッスンにする、などです。
- 受講生1人・1時間あたりの料金を確認する:ここでは約1,330円で、調べた相場と比べます。
- 費用が変わったら計算し直す:家賃の値上げや講師の給与体系の変更の後、少なくとも年に1回は見直します。
毎学期、講座ごとの損益分岐点と実際のクラスの人数を比べましょう。定期的に確認すべきほかの数字はスクール経営のKPIの記事で紹介しています。
料金体系を選ぶ
料金体系によって、受講生の支払い方と収入の見通しやすさが決まります。講座の種類に応じて2〜3の体系を組み合わせるスクールも多くあります。
- 1時間・1回ごと:分かりやすく柔軟で、個別指導やマンツーマンレッスンでよく使われます。キャンセルで収入が変動するため、直前のキャンセルは受講料をいただくといった明確なルールが必要です。
- 講座・学期単位のパック:12週間の講座のように、決まった時間数に一つの価格を付けます。受講生の継続を確保でき、クラスの計画が立てやすく、損益分岐点の計算も簡単です。グループ講座で最も一般的な体系です。
- 月謝:継続的な個別指導や子ども向けの語学クラスなど、随時入会の講座に毎月定額を設定します。収入が安定し、家庭も予算を立てやすくなりますが、退会の申し出期限を明確にする必要があります。
- グループか個人か:個人レッスンは受講生にとって1時間あたりかなり高くなりますが、支払うのが1人なので、満員のグループより1時間あたりの売上が少ないことがよくあります。個人レッスンは1時間の総原価に利益を上乗せして設定し、2〜3人のセミプライベートはその中間にします。
- 集中講座:毎朝の講座や長期休みの講習など、短期間に多くの時間を学ぶ形式です。早く目標に届くため割増料金にできますが、講師と教室を混雑する時間帯に押さえるため、別に計算します。
どの体系でも、社内では受講生1人・1時間あたりの料金に換算しましょう。体系や講座を比べやすくなり、パック料金が原価の下限を割り込んでいないかもすぐに分かります。
利益を削らない割引
割引は、早めにクラスを埋め、継続に報い、紹介を増やすための正当な手段です。ただしルールがないと、すぐに当たり前になり、平均単価を静かに押し下げます。
よくある割引の種類
- 早期申込割引:開講前の決まった日までの申し込みを割り引きます。クラスが最少催行人数に届くかを早めに知る手がかりにもなります。
- 兄弟姉妹・友人割引:家族や友人が一緒に入会したときに割り引きます。在籍生からの紹介は、多くの場合最も費用のかからない集客経路の一つです。
- 複数講座・継続割引:次のレベルを事前に申し込んだ場合や、2つの講座を同時に申し込んだ場合に割り引きます。継続率の向上に役立ちます。
- 一括払い割引:分割ではなく講座の全額を前払いした場合に少し割り引きます。
割引の規律
- 認める割引を短い一覧にし、それぞれの金額と条件を文書にします。
- 割引の併用を認めるかを決め、1件の申し込みあたりの割引の上限を設けます。
- 損益分岐点は定価ではなく割引後の価格で計算します。
- 割引は理由があるときにだけ認め、頼まれたからという理由では認めず、全員に同じように適用します。
- 学期に一度、どの割引が何件使われたかを確認します。ほぼ全員が割引を受けているなら、定価が高すぎるか、ルールが甘すぎる可能性があります。
上の架空の例で6,000円の早期申込割引を設けると、受講生1人あたりの貢献額は60,000円から54,000円に下がり、損益分岐点は7人から8人に上がります(384,000円÷54,000円=7.1、切り上げ)。小さな割引でも、数字は見た目以上に変わります。
分割払いと値上げ
分割払い
分割払いがあると、長期で高額な講座にも申し込みやすくなり、特に家庭が自費で払う場合に役立ちます。講座が終わる前に全額の支払いが済むように分け、初回分は入会時に受け取り、支払期日と金額はすべて書面で示します。分割払いのほうが一括払いより総額が高くなる場合は、両方の価格をはっきり示しましょう。支払いプランの設定とフォローの方法は受講料の支払い・請求書・分割払いのガイドで解説しています。
値上げ
費用が上がる以上、価格もときどき上げる必要があります。数年据え置いてから大きく上げるより、4月の新年度など年1回の小さな定期的な調整のほうが、受講生に受け入れられやすいのが普通です。
- 次の学期や募集期間の数週間前など、十分に前もって新しい価格を知らせます。
- 家賃、講師の給与、新しい教材、少人数化など、主な理由を1〜2文で伝えます。
- 新しい価格は新しい学期や新規の申し込みに適用し、すでに申し込み・支払い済みの講座には適用しません。
- 感謝の気持ちとして、在籍生には1学期だけ旧価格を据え置くことも検討します。
- スタッフ全員が同じように質問に答えられるよう、事前に共有しておきます。
謝りすぎたり説明しすぎたりする必要はありません。日付、新しい価格、理由を書いた短く丁寧な案内で、ほとんどの受講生と保護者には十分です。
価格の明示、返金、税金
受講生は問い合わせる前にネットで講座を比べています。料金表を公開すると信頼が生まれ、講座が合わない人からの問い合わせも減ります。少なくとも講座ごとか月ごとの価格、時間数、教材費、検定料、修了証など何が含まれるか、支払い方法を公開しましょう。
- 課税対象の受講料を消費者向けに表示する場合は、税込みの総額で表示するのが原則です(総額表示)。
- 入会金や教材費など必ずかかる追加費用は、後から加えずにすべて示します。
- キャンセルと返金の条件は、料金表と一緒にか入会規約の中で公開します。
返金の条件は数字に影響するため、価格を考える際に一緒に決めます。手厚い返金ルールは受講生のリスクを下げますが、クラスの人数は読みにくくなります。まだ実施していない授業分を日割りで返金し、場合によっては一定の事務手数料を差し引く事業者が多くあります。どう決めるにせよ、書面にして一貫して適用しましょう。なお日本では、一定の期間と金額を超える学習塾、語学教室、家庭教師などの個人向けの契約は特定商取引法の「特定継続的役務提供」にあたり、クーリング・オフや中途解約のルールが適用されるため、返金条件もこれに沿って定める必要があります。
教育に関する消費税の扱いは国によって異なります。日本では、学校教育法上の学校などの授業料は非課税とされる一方、学習塾や語学スクールの受講料は一般に課税対象です。自校の受講料がどちらにあたるか、表示価格と手元に残る額にどう影響するかは事業の形態によって変わります。これは一般的な情報であり、税務・法務の助言ではないため、税理士や弁護士にご確認ください。
Zolinexでできる受講料と支払いの管理
Zolinexが価格を計算するわけではありませんが、決めた価格を一貫して運用するのに役立ちます。講座ごとに登録済みの受講生と登録ステータスが表示されるため、クラスが最少催行人数に達したかがひと目で分かります。ProとBusinessプランでは、請求書を作成して受講生にメールで送り、閲覧されたかを確認し、現金、銀行振込、カードといった支払い方法別に全額または一部の入金を記録できます。分割払いの講座には定期請求書を使います。たとえば毎月発行し、所定の回数で終了するよう設定すると、各回の請求書が作成され、自動でメール送信することもできます。所在国でStripeが使える場合は、受講生がオンラインでカード払いもできます。原価と損益分岐点の計算自体は表計算ソフトで行います。プランと料金は2026年10月時点のもので、変わる可能性があるため、料金プランと機能一覧をご確認ください。
よい受講料は勘で決めるものではありません。授業1時間の実際の原価、分かっている損益分岐点、料金体系・割引・値上げについての明確なルールに基づきます。これらの数字を年に一度見直せば、価格設定はストレスの多い判断ではなく、決まった業務になります。
よくある質問
講座の受講料はどうやって計算すればよいですか?
家賃、事務、ソフトウェア、保険、広告宣伝などの月の固定費を、毎月実際に提供できる授業時間で割ります。それに講師の1時間あたりの費用を足すと授業1時間の総原価になり、講座の時間数を掛けて想定人数で割ります。その結果を地域の相場と比べ、自校が提供する価値に応じて調整します。
グループ講座は何人いれば採算が取れますか?
講座の運営費を、受講生1人あたりの貢献額(受講料から教材や決済手数料などの1人あたりの変動費を引いた額)で割ります。たとえば運営費384,000円、受講料64,000円、1人あたりの変動費4,000円の架空の講座なら、損益分岐点は7人です。価格、割引、費用が変わるたびに計算し直しましょう。
受講料は1回ごと、月謝、講座単位のどれがよいですか?
講座の種類によります。1回ごとの料金は個別指導に向いていますが、収入が読みにくくなります。講座・学期単位のパックは開始日と終了日が決まったグループ講座に向き、損益分岐点の計画も簡単です。月謝は随時入会の継続講座に向いています。多くのスクールは体系を組み合わせ、社内では受講生1人・1時間あたりの料金で比べています。
塾やスクールの割引はどのくらいにすべきですか?
決まった数字はありません。早期申込、兄弟姉妹・友人、複数講座などの認める割引を短い一覧にし、金額と条件、併用のルール、合計の上限を文書にしておきます。割引後の価格でもクラスが損益分岐点に届くかを確認しましょう。ほぼすべての申し込みが割引を受けているなら、定価かルールを見直す時期です。
受講料の値上げは受講生にどう伝えればよいですか?
次の学期や募集期間より十分前に、新しい価格、適用開始日、家賃や講師の給与の上昇といった主な理由を書いた、短く丁寧な案内を送ります。新しい価格は新しい学期や新規の申し込みに適用し、申し込み済み・支払い済みの講座には適用しません。感謝の気持ちとして、在籍生には1学期だけ旧価格を据え置くスクールもあります。